『いちばんすきな花』のキャストと配信を全網羅

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いちばん好きな花
かしゅー

こんにちは、かしゅーです。

「いちばんすきな花」は、これといった事件は起きませんが、毎週楽しみなドラマでした。
ゆくえ、椿、夜々、紅葉。
四人が集まって、ただ喋っているだけの場面が、どうしてあんなに苦しいのか。
うまく説明できないまま、もう一度観たくなって戻ってきた人もいると思います。

かしゅー

私は四人の中で、紅葉にいちばん共感しました。
生方美久さんの書く作品はどれも好きですが、その中でもこれがいちばん好きです。

この記事では、キャストと相関図、第7話から登場するみどりちゃんの正体、最終回のネタバレと結末、藤井風さんが出た場面、そして今どこで観られるのかまでをまとめました。
最終回の核心に触れるのは記事の中ほどからで、その手前にネタバレ注意を置いています。
まだ観ている途中の方は、そこで引き返せるようにしました。

  • 4人の主演キャストと相関図が一目でわかる
  • 第7話から登場するみどりちゃんの正体がわかる
  • 藤井風さんの最終回出演シーンがわかる
  • 今どこで観られるかがわかる

配信は現在、FODプレミアムで全11話が見放題です。
Amazonプライムでは現在、1~3話までを見放題で視聴できます。
FODではスピンオフの「いちばんすきな花 みんなのほんね」全5本も独占配信されています。
詳しい配信情報・あらすじ・ネタバレは、このあと順番に解説していきます。

まずは、このドラマがどんな作品だったかから、一緒に振り返っていきましょう。

\まずは無料で観られる第1話から始めてみてください/

いちばんすきな花
総合評価
( 4.5 )
メリット
  • 決め台詞のない自然なセリフ回しが、実際の会話みたいで引き込まれる
  • 4人の演技が本物すぎて、誰も演技しているように見えない
  • 友達でも恋人でもない関係を、名前をつけずに肯定してくれる
  • 第7話から登場するみどりちゃんの正体を知ると1話から見返したくなる
  • 藤井風さんの最終回サプライズ出演は切り抜きでは伝わらない映像体験
目次

いちばんすきな花とは

木曜劇場で描かれた全11話

ソファで一緒にくつろぐ人たち(イメージ)

「いちばんすきな花」は、2023年10月12日から12月21日まで、フジテレビの木曜劇場で放送されたテレビドラマです。
全11話。
主演は多部未華子さん、松下洸平さん、今田美桜さん、神尾楓珠さんの4人で、誰か1人を主役に立てない「クアトロ主演」という形が取られました。

物語の中心にあるのは、恋愛でも家族でもない関係です。
二人組を作るのが苦手なまま大人になった4人が、ある一軒家に集まって、他愛のない話をする。
やっていることはそれだけなのに、11話ぶん目が離せません。

平均視聴率は5.1%でした。
数字だけ見ると、爆発的にヒットしたドラマではありません。
それでも放送が終わって2年以上たった今も名前が出続けているのは、観た人の中に何かが残り続けているからだと思います。
私の場合、残ったのは「あのとき言えなかったこと」の記憶でした。

脚本は生方美久

ノートに書き込む手元(イメージ)

脚本を書いたのは生方美久さんです。
「silent」で一気に名前が知られた脚本家で、その後は「海のはじまり」も手がけています。

生方さんの書くセリフには、決め台詞がありません。
言い切らずに途中で止まったり、言い直したり、黙ってしまったりする。
実際の会話ってこうだよな、と思わされる書き方です。

そして「いちばんすきな花」には、原作がありません。
漫画も小説も存在しない、完全なオリジナル脚本です。
書籍としては、放送後に脚本を収録したシナリオブックが出ています。
原作を探して見つからなかった方は、たぶんそれを見かけたのだと思います。

演出は髙野舞さんをはじめとする4人が担当し、音楽は得田真裕さんが手がけました。
主題歌は藤井風さんの「花」で、オープニングとエンディングの両方で流れます。

生方美久さんの作品には他に「Tシャツが乾くまで」があります。

silentや海のはじまりとの違い

霧の中で分かれる森の小道(イメージ)

生方作品の中で、私がいちばん好きなのが「いちばんすきな花」です。
「silent」は恋愛の物語でした。
「海のはじまり」は親子の物語でした。
どちらも、関係に名前がついています。

でも「いちばんすきな花」の4人には、名前のつく関係がひとつもありません。
友達と呼ぶには近すぎて、恋人と呼ぶには足りない。
その居心地の悪さを最後まで解消しないまま終わるところに、私は救われました。
答えを出さないでいてくれるドラマは、そう多くありません。

4人が同じ家に集まって過ごす形から、「カルテット」を思い出した人もいるはずです。
たしかに、集まって喋るだけで進む点と、全員がどこか欠けている点は似ています。
ただ「カルテット」の4人は同じ家に住んでいて、この4人は住んでいません。
毎回それぞれの生活から出てきて、また自分の家に帰っていく。
その帰り道の距離が、このドラマの切なさをつくっています。

似ているドラマを探して観に来た方には、「海のはじまり」より先に「silent」をおすすめします。
同じ脚本家が、恋愛という名前のある関係を書くとどうなるかがわかると、「いちばんすきな花」で名前をつけなかった意味が見えてきます。

では、その4人がどんなふうに出会っていくのか。
あらすじから追いかけていきましょう。

いちばんすきな花のあらすじ

第1話から第3話までのあらすじ

自然光が差し込む誰もいない部屋(イメージ)

物語は、誰も住んでいない一軒家から始まります。
春木椿が住むはずだった家に、その日、3人の他人が別々の用事でやってきました。

学習塾の講師をしている潮ゆくえは、花の配達を頼まれて。
美容師の深雪夜々は、店に忘れられた椿の社員証を届けるために。
コンビニで働きながらイラストレーターを目指す佐藤紅葉は、高校時代の数学の先生を探して。
家主の椿を入れて4人。
初対面の大人が玄関先で顔を合わせただけの、それだけの出来事でした。

ところが4人には、ひとつだけ共通点がありました。

全員が、2人組を作るのが苦手なまま大人になっていたのです。


ゆくえは女友達に本音を話せません。
椿は長く付き合った恋人を男友達に奪われた過去があり、男女の友情という言葉を信じていません。
夜々は誰かと1対1で向き合うことが怖い。
紅葉は、自分と向き合ってくれる人がいなかった記憶を、明るさの下に隠しています。

第1話から第3話にかけては、この4人が少しずつ集まるようになるまでが描かれます。
椿の家に集まって、コンビニで買ってきたものを食べながら、どうでもいい話をする。
そのどうでもいい話の合間に、それぞれが誰にも言えなかったことが1つずつこぼれていきます。

第4話から第7話までのあらすじ

中盤に入ると、4人の関係に少しずつ角度がつきはじめます。

ゆくえには、高校時代に同じ塾で出会った男友達・赤田鼓太郎がいます。
そんな彼が結婚することになり、ゆくえは「男女の友情」という問題を、自分自身のこととして考えることになります。
一方、椿は、別れた婚約者への感情をまだ整理しきれずにいました。
夜々は、自分を深く愛してくれる母親との関係に、複雑な思いを抱えています。
そして紅葉は、ゆくえへの自分の気持ちと向き合うと同時に、人との関わり方について考えを巡らせていきます。

第4話あたりから、4人でいるときの空気にわずかな緊張が混ざりはじめます。
誰かが誰かを大切に思うほど、残りの誰かが少しだけ寂しくなる。
友情にも嫉妬はある、というのがこのドラマの容赦のないところです。

そして第7話から、志木美鳥という人物が登場します。
みどりちゃんと呼ばれる彼女が現れたとき、4人がなぜあの家に集まったのかの意味が変わります。
ここが物語の折り返し地点です。

第8話から最終回までのあらすじ

窓の外を考え込んで見つめる人(イメージ)

第8話以降は、4人がそれぞれ抱えていたものと正面から向き合っていきます。
言わないままにしていた気持ちが、ひとつずつ言葉になります。
言葉になった瞬間に壊れてしまうものがあることも、このドラマはちゃんと描きます。

第10話、第11話と進むにつれて、4人の距離は近づくというより、それぞれの形に落ち着いていきます。
恋人になるのか、友達のままなのか。
その二択で観ていると、最終回で少し裏切られます。
このドラマが用意していた答えは、どちらでもありませんでした。

ここから先は結末に触れるため、いったんここで止めておきます。
最終回で4人が選んだものと、藤井風さんが出演した場面については、この先のネタバレの見出しでまとめました。
まだ観ている途中の方は、次のキャストと相関図までを読んで、そこで引き返してください。

キャストと相関図を整理

主演4人のキャストと役柄

このドラマには、主役が4人います。
誰か1人の物語ではなく、4人の物語として並列に描かれるクアトロ主演という形です。

潮ゆくえ(多部未華子)
34歳、学習塾「おのでら塾」の講師。新潟から上京して、妹と2人で暮らしています。生徒の前では頼れる先生なのに、自分のことになると本音を飲み込んでしまう人でした。
春木椿(松下洸平)
36歳、白波出版に勤める会社員。実家は花屋ですが、本人は花屋という仕事にも家族にも距離を置いています。長く付き合った恋人を男友達に奪われた過去があり、男女の友情という言葉を信じていません。4人が集まる家は、もともと椿が住むはずだった家でした。
深雪夜々(今田美桜)
26歳、表参道の美容院「スネイル」で働く美容師。誰かと1対1で向き合うことが怖い、と言い続けます。自分の見た目が原因で人との距離が歪んでしまうことに、ずっと疲れている人でした。
佐藤紅葉(神尾楓珠)
27歳、コンビニで働きながらイラストレーターを目指しています。ゆくえとは新潟時代からの幼なじみです。4人の中でいちばん明るく振る舞っていて、いちばん誰にも頼っていません。

今田美桜さんの芝居は、笑っている場面のほうが痛々しく見えます。
私が紅葉に共感したのは、この「明るくいれば誰にも心配されない」というやり方に、覚えがあったからです。

ゆくえを取り巻く人たち

カリグラフィーで書かれた招待状(イメージ)

赤田鼓太郎(仲野太賀)は、ゆくえの高校時代からの男友達です。
同じ塾に通っていた頃からの付き合いで、大人になった今も連絡を取り合っています。
この関係が、男女の友情というテーマの入り口になります。
その鼓太郎と結婚することになるのが、白石峰子(田辺桃子)です。

潮このみ(齋藤飛鳥)は、ゆくえの妹です。
姉と2人暮らしをしていて、姉に対してだけは容赦がありません。
乃木坂46を卒業した齋藤飛鳥さんが、卒業後に初めて出た連続ドラマがこの作品でした。

潮みきこ(神野三鈴)は、ゆくえとこのみの母です。
ゆくえが勤める「おのでら塾」の生徒として出てくるのが、望月希子(白鳥玉季)と穂積朔也(黒川想矢)の2人です。
中学生の2人が塾で交わす会話は、大人4人の会話とほとんど同じことを扱っています。
年齢が違うだけで、人と2人組になれない苦しさは変わらない。
この対比のために、生徒役の2人は置かれています。

椿と夜々と紅葉の周辺人物

照明が施されたおしゃれな美容室(イメージ)

椿の周りから見ていきます。
小岩井純恋(臼田あさ美)は、椿の元恋人です。
春木楓(一ノ瀬颯)は椿の弟で、春木鈴子(美保純)は2人の母にあたります。
椿が実家の花屋に近づけない理由は、この家族の関係の中にあります。

椿が勤める白波出版には、乃木夏美(山谷花純)と三谷彩子(杏花)という同僚がいます。
会社での椿は、4人でいるときとまるで違う顔をしています。
その落差が見えるのが、この2人の出てくる場面でした。

夜々の側には、深雪沙夜子(斉藤由貴)がいます。
夜々の母です。
夜々が自分の見た目との付き合い方に迷い続ける背景に、母との関係があります。
相良大貴(泉澤祐希)は、夜々の周辺で夜々に好意を寄せる人物として出てきます。

紅葉の周辺は、意図的に人が少なく描かれています。
家族の話も、友人の話も、ほとんど出てきません。
それ自体が紅葉という人の説明になっていて、観ているうちに気づかされます。

子役と生徒役のキャスト

教室で授業を受ける様子(イメージ)

4人の子ども時代を演じたのは、それぞれ別の子役です。
小学5年生のゆくえを橋村結稀さん、中学1年生の椿を土田諒さん、6歳の夜々を泉谷星奈さん、5歳の紅葉を須山結斗さんが演じました。
回想は長くありません。
短い場面が1つ挟まるだけで、その人が今どうしてそうなったかがわかる作りになっています。

塾の生徒として登場する望月希子(白鳥玉季)と穂積朔也(黒川想矢)は、子役という枠を超えた分量で描かれます。
白鳥玉季さんは「不適切にもほどがある!」など、黒川想矢さんは映画「怪物」や「国宝」などへ出演しています。
大人の4人が言葉に詰まる場面と、中学生の2人が黙る場面が、同じ重さで並べられています。

みどりちゃん志木美鳥とは

志木美鳥(田中麗奈)は、第7話から登場します。
みどりちゃんと呼ばれるこの人物が、4人にとって何者だったのか。
ここが、このドラマの構造がひっくり返るところです。

美鳥は、夜々の従姉であり、椿の中学の同級生であり、ゆくえと赤田鼓太郎が高校時代に通った塾の講師であり、紅葉にとっては高校の数学の先生でもありました。4人全員が、それぞれ別の場所で、この1人と関わっていたことになります。

第1話で紅葉が椿の家を訪ねた理由が「高校時代の数学の先生を探して」だったことを思い出してください。
あの時点から、答えは画面に置かれていました。

田中麗奈さんは、みどりちゃんの現在と、4人が知っていた頃の若い姿の両方を背負って演じています。
昔の話をするときの表情が、少しだけ違う。
その差が、4人の記憶の中の先生と、目の前にいる大人の女性のずれになって出てきます。

ここまでが、ネタバレなしで読める範囲です。
次の見出しからは最終回の結末に触れます。
まだ観ている途中の方は、いったんここで画面を閉じて、続きを観てから戻ってきてください。

最終回のネタバレと結末

  • ここから先は最終回の結末に触れます
  • 未視聴の方は「主題歌とサントラ」まで読み飛ばしてください

最終回で4人が選んだ答え

引っ越しの段ボール箱に囲まれた部屋(イメージ)

最終回で、椿の家は手放されます。
4人が集まっていたあの場所は、なくなりました。
引っ越しの準備をしながら、4人はマグカップだけはあの家に置いていくことを決めます。
そして玄関で、それぞれが「お邪魔しました」と深く頭を下げて出ていきました。

他人の家に上がらせてもらった人の言葉です。
家族でも恋人でもない4人が、最後まで守った距離が、この一言に全部入っていました。

そして引っ越しから少したったある日、4人はまた集まって、それぞれの近況を報告し合います。
このドラマがたどり着いた答えは、「いちばん好きな人は1人じゃなくていい」でした。
恋人になるか、友達のままか。
その二択で観ていた人ほど、最終回で肩の力が抜けたはずです。

藤井風が最終回に出演

集中してピアノを弾く人(イメージ)

最終回の終盤、椿の家に藤井風さんが現れます。
そして、あの家のピアノで「花」を弾き語りました。
主題歌を歌っている本人が、4人が過ごした部屋に立って歌う。
放送直後にこの場面の話題が広がったのは当然だと思います。

出演といっても、役を演じているわけではありません。
セリフもありません。
物語が終わったあとの空気の中に、歌だけが置かれます。
だから「出演シーンはどこ」と探している方には、最終回のラストとお伝えするのがいちばん正確です。

この場面は、切り抜きで観ても正直あまり意味がわかりません。
11話ぶん4人を見送ったあとで、あの誰もいなくなった部屋にピアノの音が響くから、効きます。
歌そのものより、そこに誰がいたかの記憶が効いている場面でした。

結末をどう受け取るかの考察

金色の木々に囲まれた秋の森の小道(イメージ)

この最終回の受け取り方は、観た人によってはっきり割れています。

ひとつは、4人はこれからも今の距離のまま続いていく、という読み方です。
家がなくなっても、名前のない関係は続く。
集まって近況を報告し合うラストは、そう読むための場面として置かれています。

もうひとつは、あれは終わりの挨拶だった、という読み方です。
家を出るときの「お邪魔しました」も、置いていったマグカップも、戻らない前提の行動として見ることができます。

私は、前者とだと思ってますが、後者だと感じた人もいると思います。
ただ、どちらで受け取っても、このドラマが否定されないようにできています。
続いていくと思う人にはそう見えるし、終わったと思う人にもそう見える。
答えを決めないまま終わらせたのは、たぶん意図的です。

男女の友情は成立するのか、という最初の問いにも、このドラマは最後まで答えを出しません。
代わりに、成立するかどうかを言い切れない関係のまま、大切にしていいと示しました。
言葉になった瞬間に壊れるものがある、と本編は何度も見せてきました。
だから結末も、言葉にしなかったのだと思います。

文字にすると、ここまでです。
ただ、この最終回の良さは、話の筋よりも間のほうにあります。
誰も何も言わない数秒、目線が外れる一瞬、置かれたマグカップの映し方。
そこが本体なので、あらすじを読んだだけでは半分も届きません。

\あの11話ぶんの空気を、自分の目で確かめてみてください/

名言と忘れられない名シーン

何度も思い出す名言

薄暗い舞台でリハーサルする人たち(イメージ)

このドラマのセリフは、名言として切り取ると弱く見えます。
決め台詞がないからです。
言い切らない、言い直す、途中でやめる。
その代わり、観ているあいだじゅう刺さり続けます。

いちばん多く聞くことになるのが、夜々の「ばーか」です。
怒っているわけでも、からかっているわけでもありません。
本音を言ったあとの照れ隠しに、口癖のように出てきます。
1対1で人と向き合うのが怖いと言っていた夜々が、この一言を誰に向けて言うようになるか。
そこを追いかけていくと、最終回の夜々の変化がよくわかります。

最終回のタイトルにもなった「いちばん好きな人は1人じゃなくていい」も、このドラマを一行で表す言葉になりました。
好きな人を1人に決めなければいけないと思い込んでいた4人が、11話かけてたどり着いた結論です。

そして私がいちばん覚えているのは、名言というより挨拶でした。
椿の家を出るとき、4人が口にした「お邪魔しました」です。
あれだけ長い時間を過ごした場所を出るのに、選んだ言葉が他人行儀な挨拶だった。
家族でも恋人でもない4人が、最後まで手放さなかった礼儀がここに出ています。
私はこの場面で、初めて4人を羨ましいと思いました。

4色のマグカップが意味するもの

赤・緑・青のマグカップが並ぶ様子(イメージ)

椿の家には、4人ぶんのマグカップがありました。
色はそれぞれ違います。
集まるたびに自分の色を手に取る、それだけの小道具でした。

このマグカップが効いてくるのが最終回です。
家を引き払うとき、4人はマグカップを持ち帰らず、あの家に置いていくことを選びます。
思い出の品なら、普通は持って帰ります。
でも4人は、置いていくほうを選びました。
自分の色のカップがあの場所に残っているという状態を、そのまま残したかったのだと思います。

小道具ひとつで関係の形を見せる作りは、このドラマの得意技でした。
放送当時、同じマグカップを探す人が続出したのも覚えています。
4色そろえて自分の分と誰かの分を並べたくなる気持ちは、よくわかります。

紅葉にいちばん共感した理由

4人の中で、私がいちばん自分を重ねたのは紅葉でした。
紅葉は、いつも一番先に笑います。
場の空気が重くなりそうになると、誰よりも早く冗談を言う。
だから紅葉は、誰からも心配されません。

明るくしていれば、誰も踏み込んでこない。
踏み込まれないことを望んでいるようで、本当は誰かに気づいてほしい。
その矛盾を抱えたまま何年も過ごしてきた人の顔を、神尾楓珠さんはずっと崩さずに演じていました。

紅葉の周りに家族や友人の話がほとんど出てこないことに気づいたとき、少し息が詰まりました。
出てこないのではなく、紅葉が出さないようにしてきたのだと思います。
ゆくえとの幼なじみという関係も、紅葉にとっては安心できる場所であると同時に、いちばん本音を言えない場所でした。
自分の気持ちに名前をつけないまま隣にいるほうが、失わずに済むからです。

この記事を読んでいる方の中にも、4人のうち誰かに自分を見つけた人がいるはずです。
ゆくえだった人、椿だった人、夜々だった人、紅葉だった人。
どれを選ぶかで、このドラマの見え方はまるで変わります。
私はいちばん好きな花で神尾楓珠さんが気になり、「すべての恋が終わるとしても」を観ていました。

男女の友情は成立するのか

友達と恋人の境界線

自然の中にかかる二車線の橋(イメージ)

このドラマが最初に投げかける問いは、男女のあいだに友情は成立するのか、というものです。

椿は、成立しないと考えています。
長く付き合った恋人を男友達に奪われた経験があるからです。
友達だと言っていた2人が、結局そうなった。
その事実を目の前で見た人にとって、男女の友情という言葉は嘘にしか聞こえません。

ゆくえは逆です。
高校時代からの男友達である赤田鼓太郎とは、恋愛の話にならないまま何年も続いてきました。
だからゆくえにとって、男女の友情は成立するものでした。
ところが鼓太郎の結婚が決まった瞬間、その関係の呼び名があやしくなります。
友達なら、祝えるはずです。
祝えない自分に気づいてしまったとき、ゆくえは自分が何を持っていたのかわからなくなります。

このドラマは、どちらが正しいかを決めません。
代わりに、成立するかどうかを決めなければならないと思い込んでいること自体が、しんどいのではないかと問い返してきます。
友達か、恋人か。
その2つしか名前がないせいで、行き場をなくしている関係はたくさんあります。

4人が保った絶妙な距離

春の公園を並んで歩く2人(イメージ)

4人の中でも、気持ちの向きははっきり同じ方向を向いていません。
紅葉がゆくえに向ける感情は、幼なじみへの親しみだけで説明がつかない場面が何度もあります。
夜々と椿のやりとりにも、友達同士とは呼びにくい温度が混ざります。

それでも、誰も付き合いません。
告白して関係を進めるという、恋愛ドラマなら当然の手順を、この4人は最後まで踏みませんでした。
進めなかったのではなく、進めないことを選んだのだと思います。
名前をつけた瞬間に、この4人で集まる時間は終わってしまう。
それを全員がわかっていました。

だからゆくえは自分の気持ちを片思いと呼ばず、紅葉も自分の気持ちを恋と呼びません。
呼ばないまま、隣にいることを選びます。

観ているこちらは、正直もどかしいです。
早く言えばいいのに、と何度も思いました。
でも最終回まで観ると、言わなかった11話ぶんの時間そのものが、この4人にとってのいちばん大事なものだったとわかります。

男女の友情が成立するかどうか。
その答えは出ないまま、成立するかどうかを問わなくていい関係が、ここにありました。
このテーマの受け取り方が、そのまま作品の評価に直結します。
賛否がはっきり分かれた理由を、次に見ていきましょう。

感想と口コミの賛否

4人の自然体な演技が良い

スポットライトに照らされた舞台の赤いカーテン(イメージ)

このドラマで私がいちばん好きなのは、演技です。
多部未華子さん、松下洸平さん、今田美桜さん、神尾楓珠さんの4人が、誰も演技をしているように見えません。
テーブルを囲んで話しているだけの場面で、誰かが喋っているあいだ、残りの3人がちゃんと生きています。

聞いている顔、目をそらす瞬間、笑うタイミングが少しずれる感じ。
普通のドラマなら、喋っていない人はただ待っています。
この4人は待っていません。
特に多部未華子さんの、言いかけてやめるときの間の取り方は見事でした。
言葉が出てこないふりではなく、本当に出てこない人の顔をしています。

台本にどう書いてあるのか気になって、シナリオブックを手に取った人が多かったのもわかる気がしませんか。
会話がうまいドラマではなく、会話が下手な人たちを描くのがうまいドラマでした。

セリフがくどいという声

一方で、否定的な感想もはっきりあります。
いちばん多いのが、セリフがくどいという意見です。
このドラマの登場人物は、自分の気持ちを丁寧に、長く説明します。
現実の会話でここまで自分を言語化する人はいません。
その不自然さが気になり出すと、最後まで気になり続けます。

設定そのものへの違和感も指摘されています。
初対面の4人が同じ日に同じ家に集まり、そのまま一緒にコーヒーを飲む展開は、現実的ではありません。
4人を出会わせず、それぞれの物語として観たかったという声もありました。
たしかに、この1点を飲み込めないと11話は長く感じるはずです。

登場人物がめんどくさい、という感想もよく見かけます。
これは的外れではありません。
4人とも、はっきり言えば面倒な人たちです。
思っていることを言わず、察してほしがり、察してもらえないと勝手に傷つきます。
ひどい、つまらないという評価の多くは、この面倒くささに耐えられなかった人から出ています。

合う人と合わない人の違い

道を歩く人たちの後ろ姿(イメージ)

観る前に判断したい方のために、はっきり書きます。
事件が起きて、話が動いて、次回が気になる展開を求めている人には向きません。
11話のあいだ、大きな出来事はほとんど起きないからです。

逆に、こういう人には刺さります。

  • 2人組を作るのが苦手だった記憶がある人
  • 友達だと思っていた相手との関係に、名前をつけられなかったことがある人
  • 言いたいことを言えないまま何年も過ごした経験がある人

このドラマは、そういう人の話を代わりにしてくれます。

私が面倒だと感じた登場人物たちは、たぶん私自身でした。
面倒だと思いながら最後まで観てしまったのは、そこに自分がいたからだと思います。
評価が割れているのは、作品の出来ではなく、観る人の傷の場所が違うからです。
だから口コミの平均点で決めるのは、この作品に関してはもったいない。

11話ぶんの時間を使う価値があるかどうかは、最初の2話でだいたいわかります。
まずはそこまで観てみて、続きが気になったら残りを進めるのがいちばん確実です。
今は無料期間のあるサービスで最初から観られるので、合うかどうかを自分の目で確かめてみてください。

\迷っているなら、まず最初の2話だけ試してみてください/

主題歌とサントラ

主題歌は藤井風の花

引用:Fujii Kaze YouTubeチャンネル

主題歌は藤井風さんの「花」です。
このドラマのために書き下ろされた曲で、オープニングとエンディングの両方で使われました。
普通、オープニングとエンディングは別の曲を用意します。
同じ1曲を頭と最後の両方に置いたのは、この曲がドラマの一部として作られているからだと思います。

歌詞は、誰かを特別な1人に決められない気持ちをそのまま言葉にしたような内容です。
11話を観たあとに聴くと、意味の入り方がまるで変わります。
最終回では藤井風さん本人が椿の家でピアノを弾き語り、フルコーラスで流れました。
ドラマを観てから曲を好きになった人も、曲からドラマに来た人も、あの場面で同じところに着地します。

得田真裕のサントラと楽譜

開いたノートの上に置かれたシャープペンシル(イメージ)

劇伴を手がけたのは得田真裕さんです。
このドラマの音楽は、鳴る場所が独特でした。
感情が動く場面ではなく、誰も何も言わない数秒に、ピアノが入ってきます。
黙っている時間の気まずさを、音楽が引き受けている作りです。

サウンドトラックはCDと配信の両方で出ています。
劇中歌として使われた曲も収録されていて、ドラマの空気を思い出したいときに聴くならこちらがいちばん近い。
得田さんの曲は劇伴なので歌詞はありません。
歌詞を探して見つからなかった方は、藤井風さんの「花」のほうを探してみてください。

ピアノで弾きたい人向けの楽譜も出ています。
サントラのメインテーマは、思ったより難易度が高くありません。
弾いてみると、あの間の取り方が音符で設計されていたことがわかります。
音楽から作品に入り直すと、ロケ地や小物の見え方も変わってきます。

ロケ地とグッズ

椿の家などのロケ地

このドラマの舞台は、ほとんどが椿の家です。
4人が集まるあの一軒家は、部屋の広さも家具の配置も、実際に人が暮らしていた家の質感があります。
撮影に使われた場所は一般の住宅で、公式に住所が公開されているわけではありません。
聖地巡礼を考えている方は、私有地に立ち入らないようにだけ気をつけてください。

夜々が働く美容院「スネイル」の設定は表参道です。ロケ地は「グラッド」という店です。
4人がよく買い出しに行くコンビニや、パンを買う場面など、生活圏の描写も細かく作られています。
派手な観光地は一つも出てきません。
自分の家の近所にありそうな景色ばかりを選んでいるのも、この作品らしいところです。

マグカップなどのグッズ

色とりどりの陶器製マグカップのコレクション(イメージ)

放送当時いちばん探された小物は、やはり4色のマグカップです。
公式グッズとしても展開され、スマホケースやパジャマなど、あの家の生活感を持ち帰れるアイテムが並びました。
同じものを4色そろえて、誰の色にするか決める。
そんな買い方をした人もいたはずです。
このドラマは、そういう小さな持ち物の話が似合います。

では、いよいよ今どこで観られるのかを整理します。

いちばんすきな花の配信

この作品は現在FODプレミアムで見放題配信中です(第1話から第3話はアンケート回答で無料)。

FODで全話とスピンオフ

リモコンを持ちテレビ画面に向かう手元(イメージ)

「いちばんすきな花」を全11話まとめて観られるのは、FODプレミアムです。
フジテレビの作品なので、当然といえば当然でした。
月額976円で、第1話から最終回まで見放題になります。
第1話から第3話までは、アンケートに答えると無料で観られる仕組みも用意されています。
合うかどうかを確かめてから決めたい方は、まずここまで観てみてください。

FODを選ぶ理由がもう一つあります。
スピンオフの「いちばんすきな花 みんなのほんね」が、FODでしか配信されていないからです。
本編で描かれなかった側の話が入っていて、本編を観終わった直後にいちばん効きます。
齋藤飛鳥さん演じるこのみと、泉澤祐希さん演じる大貴が出てくる回もあります。
本編とスピンオフを続けて観られるのは、今のところこのサービスだけです。

Amazonプライムで観る方法

Amazonプライムビデオを使っている方は、少しだけ注意が必要です。
プライム会員の見放題対象には、この作品は入っていません。
ただ現在3話まで視聴することができます。
普段の視聴をプライムビデオにまとめている方は、まずはお試し視聴することができるのです。

作品数や画面の使いやすさを取るならFODプレミアム、アカウントを増やしたくないならプライムビデオ経由。
その程度の違いなので、好きなほうで問題ありません。

NetflixとHuluとTVerの状況

Netflixでは配信されていません。
Huluも同じく配信なしです。
U-NEXT、DMM TV、Lemino、ABEMAでも観られません。
ネットフリックスで探して見つからなかった方は、探し方が悪いわけではなく、そもそも入っていないということです。
無料で観る方法を探しているなら、FODやAmazonプライムの第1話から第3話の無料公開が、いちばん現実的な入り口です。

DVDとBlu-rayで観る方法

手元に置いておきたい方には、DVDとBlu-rayが出ています。
ディレクターズカット版として発売されていて、Amazonなどで購入できます。
配信では観られない映像が入っているので、本編を気に入った人ほど価値があります。

レンタルで済ませたい場合は、TSUTAYA DISCASとゲオの宅配レンタルが使えます。
2024年6月からレンタルが始まっていて、店舗でも借りられます。
配信サービスを増やしたくない方や、まとめて一気に観たい方には、宅配レンタルのほうが合うかもしれません。

観る手段が決まったら、あとは再放送とスピンオフの情報を押さえておけば十分です。

再放送とスピンオフと書籍

再放送の予定

薄暗い部屋に置かれたクラシックなテレビ(イメージ)

地上波での再放送は、現時点で予定されていません。
フジテレビ系の連続ドラマは、放送から時間がたつと配信に一本化される傾向があります。
BSやCSでの放送も、今のところ発表はありません。

地域によっては系列局が独自に再放送枠を組むことがありますが、それも告知は直前です。
再放送を待つより、FODで観てしまったほうが早いというのが正直なところでした。

スピンオフと関連書籍

スピンオフの「いちばんすきな花 みんなのほんね」は、本編では語られなかった人物の側から描かれた短編です。
FODでのみ配信されていて、他のサービスでは観られません。
続編や舞台化については、発表されていません。

書籍としては、脚本をそのまま収録したシナリオブックが出ています。
原作小説や漫画は存在しないので、本や小説を探していた方が行き着く先はこれになります。
放送では聞き取れなかった間や、カットされた言葉が文字で残っているのが面白いところです。

よくある質問

いちばんすきな花はどこで見られますか?

FODプレミアムで全11話が見放題です。プライムビデオを使っている方は、その中の「FODチャンネル for Prime Video」からでも観られます。Netflix、Hulu、U-NEXTでは配信されていません。

いちばんすきな花は全何話ですか?

全11話です。2023年10月12日から12月21日まで、フジテレビの木曜劇場で放送されました。

いちばんすきな花に原作はありますか?

原作はありません。生方美久さんによる完全なオリジナル脚本です。書籍としては、放送後に脚本を収録したシナリオブックが発売されています。

藤井風は最終回に出演していますか?

出演しています。最終回の終盤、4人が過ごした椿の家で、主題歌の「花」をピアノで弾き語る場面があります。役として出ているわけではなく、セリフはありません。

登場人物のMBTIは公表されていますか?

公式に発表されたMBTIの設定はありません。視聴者のあいだで話題になっているだけなので、公式情報として扱わないほうが安全です。

まとめ

事件も謎も起きない11話でした。
それなのに、観終わったあとに残るものが多すぎます。

このドラマが最後に出した答えは、いちばん好きな人は1人じゃなくていい、というものでした。
友達か恋人か、その二択で人を並べ替えなくていい。
私はそれを、紅葉の顔を見ながら受け取りました。
明るくしていれば誰にも心配されない、と知っている人の話でした。

FODプレミアムやAmazon プライムで、第1話から第3話までを無料で観られます。
合うかどうかは、そこまでで判断できます。

\まずは無料で観られる第1話から始めてみてください/

観終わったあとに、あの四色のマグカップやシナリオブックを手元に置きたくなる日が、たぶん来ます。
そのときは、脚本の文字で読み返してみてください。
放送では聞き逃していた間が、そこに残っています。

あの家に集まっていた4人は、最後に「お邪魔しました」と言って出ていきました。
あなたが今つないでいる関係にも、名前がついていないものがあるかもしれません。
名前をつけないまま大事にしていい。
このドラマは、そう言ってくれます。

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